#01
ずっと気になっていた
歯と認知症の関係
清水千夏さん 32歳/看護師
- #将来から逆算
- #認知症予防
- #家族の健康
「看護師を目指した理由はちょっと恥ずかしいんですけど......。小学生のときに伝記を読んで、ナイチンゲールに憧れて(笑)」
人の命を救う仕事に就いて10年。病院に来るさまざまな方の人生を通し、“健康でいられることのありがたみ” を清水さんは人一倍実感しています。
そんな彼女が掲げる、これからの目標とは?
「やっぱり最期まで、好きな人と好きなことをして過ごしたいですね!」
将来から逆算して、“今”を考えます
職業柄もあるのかもしれませんが、できれば病院にお世話にならずにコテンといくのが理想です。最期まで普通にご飯を食べて、やりたいことをやって、好きな人たちと好きなように過ごして。特に何歳まで生きたいとか極端に長生きしたいとか、そういう希望があるわけじゃないんですけどね。常に健康でいれば、その時点でしたいことはできるのかなと思っています。
やっぱりこういう仕事をしていると、病院で一生を終えられる患者さんもたくさん診てきているんです。少し前まで普通に生活していたのに、病気が発覚した途端急に好きなようにできなくなってしまうというか……。急性期の病棟にいると余計にそう感じるのですが、たとえば手術をすることになった場合、何ヶ月も入院しなければなりません。その間は仕事にも行けないし、家族と過ごすこともできない。もともとお食事をするのが好きだった方も、治療をしたことで食が細くなったり味覚が変わったりして、ご飯が美味しく食べられなくなることもあります。普通に元気でいられるって、本当にありがたいこと。健康はお金じゃ買えないんだなって、毎日実感させられていますね。
そう言いながらも私自身、これから病気にならない保証はどこにもないですよ。だからこそ普段から、予防を意識した生活を心がけるようにしています。まぁ今のところは、ジャンクフードを食べないとか食事はできるだけ自分でつくるとかそんなレベルですが(笑)。「ずっと健康でいたい」というゴールを先に決めて、今の過ごし方を逆算している感じですね。
ずっと気になっていた歯と認知症の関係
最近はその“日頃の予防習慣”に、歯のケアを続けるというのも加わりました。きっかけは去年、看護師仲間の紹介で知った歯医者さんで『プラークフリーテクニック』※というプログラムを受けたこと。自分に合った歯の磨き方とか細菌の話とかをしてもらう中で、口の状態が全身の病気に関連するって話を聞いたんですね。
そのとき最初に頭に浮かんだのは、認知症のことでした。いつだったか、「口からモノが食べられないと脳が衰える」「自分の歯がある人のほうが認知症のリスクが少ない」って耳にしたことがあって、ずっと気になっていたんですよ。噛むとかそういう刺激がないからなのかなっていうぼんやりとした理解でしかなかったですけど、歯が元気でしゃべれてご飯が食べられるって、すべてに良い影響を与えるんだなと。モヤモヤしていたことがいろいろと結びついた気がしました。今まで歯に関してはどちらかというと歯並びとか色にしか目がいかなかったですね。でも今は、断然健康面を気にするようになっています。
そもそも私は昔からむし歯になったことがほとんどなかったので、歯に対しては「何の問題もなくてラッキー」くらいの感覚だったんです。ただ、今回プログラムを受けるときに歯科衛生士さんにチェックしてもらったら、意外と磨けていない部分があったし、細菌が歯と歯の間にたくさん隠れていたし……。今までトラブルが少なかったのは、たまたまだったのかも。右の一番奥の欠けているところとか左の一番奥のちょっと亀裂が入っているところとか。今は自分の弱いところがわかったので、これからは気をつけながらちゃんとケアしていこうって思っています。
※プラークフリーテクニック
細菌学やOSウェルネスコネクションの考え方を基盤とした、365日細菌と闘うための方法。『一般社団法人 パームリー協会』の登録商標です。
好きな人と、好きな時間を共有できるのが一番!
私、将来の夢があって、55歳になったらフランスへ行きたいんです。マリー・アントワネットがすごく好きで、ベルサイユ宮殿が見たくて。なんで55歳かというと、35歳までに子どもを産みたいんですね。そうすると成人するのがだいたいそのくらいじゃないですか。子育てが落ち着いた頃に主人と二人、のんびり行きたいなと思っています。
そのためにはまず、今からコツコツとフランス代を貯めていかなきゃですね。それに、病気もできない!これはもちろん、夫婦ともどもです。やっぱり「人生で何が一番?」と聞かれたら、一緒にいたいと思える人と楽しい時間を共有することですし、ということは一緒にいたいと思える人、つまり家族の健康も考えなきゃいけないよなって。
今から10年くらい前に父が脳梗塞で入院したときは、家族全員が元気でいることのありがたみをつくづく感じました。“家の中で最も頼れる人”が病院で横になっていて、みんなでご飯を食べるとかどこかに出かけるといったことが、あたり前にできなくなっちゃって……。そんな父の姿を見るのはショックだったし、辛かったです。健康って、家族みんなの財産なんですよね。
父は、今はもうすっかり元気ですよ。結婚してからは回数が減ってしまったけれど、今でも年に2回くらいは旅行に行ったりしています。でも、口の中の細菌と脳梗塞は関係があるみたいだし、油断はできないですよね。ちょうど歯と体の健康が結びついているという情報を知ったところでもあるので、これからは家族にもどんどん伝えていくのが私の役割かな。まずは次に実家へ帰るときはフロスを持っていって、みんなの前でこれみよがしにやってみようと思います(笑)。
Episodeエピソード
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「実は私、6月4日生まれなんです。だから歯もキレイなほうがいいかなって(笑)」。ご自身のリスク部位をしっかり把握しながら、適した道具を使いこなす清水さん。「習慣になってしまえば、全然苦じゃないですね」
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反対咬合を治すため、小学生時代に矯正治療をした清水さん。おかげでキレイな口元を維持でき、知らず知らずのうちに歯が自分の自信になっていたといいま。そのことは今でもご両親に感謝しているそうです。
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以前働いていた病院では、手術を控える患者さんが必ず歯科口腔外科でクリーニングを受けていたのだとか。当時は病気との関連をあまり気にしていなかったものの、今になってその意味が理解できるといいます。
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「彼女はすごくちゃんとケアしているなっていつも思います。私はどうしても歯医者さんに頼りがちなので。自分でここまでできるってエライですよね」とお母さん。いろいろなことに積極的にチャレンジする娘さんの姿を、頼もしく感じています。
Columnsインタビュー後記
後日、清水さんのご両親にもお会いできる機会があり、フロスの使い方をレクチャーする様子を見せていただくと……。
「人差し指の間に張るフロスはこれくらい短く」
「汚れをこうこすり取るような感じで」
「ここに細菌がついちゃっているから、次の場所に移して」
「意外とキレイだと思っててもプラーク出てくるよ!」
編集部も思わず聞き入ってしまうほど、大事なポイントをしっかり押さえた説明力!
ご両親は定期的に通っている歯科医院でフロスをしてもらったことはあったそうですが、自分でもできるとは思っていなかったといいます。
実は清水さん、ご自身が学んだことを周りの人に伝えていきたいと考えています。
「『プラークフリーテクニック』を受けてから、歯科関連のニュースが気になるようになって。歯のトラブルのある子どもがすごく増えてるってネットで見たんですね。勉強が忙しくて、歯医者さんに行く時間がないらしくて……。でも、どっちが大事かって話ですよ!」
お子さんたちにはもちろん、親世代や塾の先生にも“歯の大切さ”を知ってもらう必要がある。そのためにも、看護師仲間のみなさんと健康についての講座を計画中です。