BeCente
gate

#02

口と命、本当に
つながっているんです!

柴田陽加さん 31歳/看護師・歯科衛生士

  • #看護師仲間へ発信
  • #細菌をコントロール

口の健康が健やかな体をつくり、健やかな体がイキイキとした人生をつくる。
それをご自身でも体感している柴田陽加さんにお話をうかがいます。
主には看護師として働いてきましたが、実は歯科衛生士の資格も持っている柴田さん。
ダブルライセンスを通じて感じた葛藤、そして希望について語ってくれました。

口しか知らない自分が、もどかしかった

歯科衛生士の資格は持っていますが、医院での勤務経験は助手だけなんです。高校3年生から専門学校を卒業するまで、アルバイトで働かせてもらいました。それから国家資格を取得して就職をどうしようと考えたとき、もうちょっと口のことだけじゃなく体のことも知りたくなっちゃったんですね。なので、そのまま看護学校に進学しました。

歯科の現場にいながら看護に興味が向いたのには、いくつかきっかけがあったんです。まず、歯科医院へ来る患者さんの高齢化が進んでいること。お薬手帳を見せていただく機会も多かったので、体に携わる以上、歯科衛生士ももっと知識を深める必要があるんじゃないかなと思いました。

それともうひとつは、衛生士学校時代の看護実習でいろんな疾患を持つ方と触れ合ったことです。食事の介助、車いすの移動、点滴。それまで口としか向き合ってきませんでしたが、一人の人に対してできることがたくさんあるという事実に衝撃を受けました。同時に、口腔ケアしかできない自分になんとなく虚しさを感じてしまったんですよ。

それから無事に看護師の資格が取れて意気込んでいたんですが……。今度は逆の葛藤に遭遇(笑)。体の健康のためには口の健康を切り離すことはできないと知りながらも、実際には現場が忙しかったり患者さんによってはリスクが多くて、納得できる口腔ケアができなかったんです。両立させる方法はあったのかもしれませんが、当時の私は見出せないまま妊娠・出産へ。「看護の現場でもっと歯科衛生士が活躍できたら、どれほど素晴らしいだろう」という想いだけが残りました

口腔ケアが命を救う。
目で見て、実感!

だけど、考えれば考えるほど口と体は直結しているなって思います。たとえば循環器内科で働いていた頃に心内膜炎の方の口を診させていただきましたが、むし歯や歯周病がすごく多いんです。入院されている他の方たちも、ほぼ同じ状態。「この人はきれいな口をしている」と思ったこと、看護の現場ではほとんどなかったんじゃないでしょうか。

そうした状況を振り返ってみても、きちんと口腔ケアされていれば病気にはならないんじゃないかって思います。一般論ではなく、この目で見たからこそ本当にそう思う。じゃあ今の自分に何ができるかといえば、これまでの経験や資格を活かして予防の大切さを広めていくこと。特に私は口の細菌が体に影響することを知っているし、その結果動けなくなったり話せなくなった人をたくさん見ています。その“誰にでも起こり得る将来”を知らせることこそ、使命なんじゃないかって思うんです。

実は最近育児も落ち着いてきたので、少しずつ動き始めました。まずは一緒に現実を見てきた看護師仲間へ。病で倒れる人をこれ以上増やさないように、口腔ケアの大切さを認識してもらうための講座を開いています。とはいえ私も歯科の現場は離れてだいぶ経っているので、セルフケアについては勉強中ですよ。プロの方からプラークフリーテクニックのレッスンを受けながら、勘を取り戻しています。

歯磨きって意外と奥が深いですよね。磨かなきゃと思っていても続けられなかったり、細菌を除去するという意識まではなかったり……。正しい情報を知ったら、衛生士の免許返納したほうがいいかもとまで思えてきました(笑)。

逆の世界を見たからこそ、
感じられる予防の重み

健康って失って初めて気づくものだと思います。そして気づいてからでは遅いし、もう取り戻せないもの。「つい最近まで元気だったのに」「日頃からもっと規則正しい生活をしていれば」。残るのは、結局後悔だけなんですよね。

それに、病気になって悲しむことになるのは本人だけではありません。家族もお友達も、それ以上に辛い気持ちになるんですよ。誰かが倒れたら周りの人たちのメンタルも不安定になるし、生活リズムも崩れていく。それは私自身、家族を通して経験したことでもあります。健康って本当、自分だけのものじゃないんです。

でも今は、防げる方法だってたくさんあります。“自分の身は自分で守る”じゃないですけど、イキイキした人生は自らつくっていけるというか。口の細菌をコントロールして体を守っていくことは、その代表格。健康はあたり前じゃないってことを多くの患者さんに教えてもらったからこそ、当時描いていたよりも予防の重みを実感できているかもしれないですね。看護の世界へ足を踏み入れなかったら、健康でいることの大切さをこんなに感じられなかったんじゃないかなって思います。

臨床時代はダブルライセンスならではのもどかしさばかり感じていましたが、今は希望にあふれていますよ!自分のちょっとした行動で元気な人が増えてくれたら、やっぱりうれしいじゃないですか。私のすべての原動力は、悲しむ人を一人でも減らすこと。看護師も歯科衛生士も国に認められた資格ですし、取得したからには社会に貢献していきたい。それが、私の今後の働き方の軸となる一つの指針になりそうです。

Episodeエピソード

  • 「育児休暇中はいろいろ勉強していました。食育インストラクターの資格を取ったり、薬膳のことを学んだり。キャリアのためはもちろん、一番は家族のため。プラークフリーテクニックも、自分が感染源になりたくないって気持ちから受け始めました」

  • 集中治療室や循環器内科での勤務経験を持つ柴田さん。病棟内で予防の話題は……?「セルフケアの話はほぼしなかったです。みんなどうしても、目の前のことでいっぱい。今思うとすごく残念ですね」

  • 柴田さんは、とにかく行動力バツグン!自分の学びのため、人へ伝えるためにどんどん進みます。最近の目標は、パームリー協会の認定資格をとること。歯科衛生士としての自分も磨き続けます。

  • プラークフリーテクニックを受けて以来、「セルフケア=健康づくり」という意識にすっかり変わったそう。サプリメントも、自分のため、家族のために摂り続けています。

Columnsインタビュー後記

栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、定期的な運動。病気にならないための予防法はたくさん存在します。実際に「ずっと健康でいたい」「子どもの世話にはなりたくない」と、スポーツジムに通ったり禁煙に取り組んだりする人も増えていますよね。世の中が健康志向なのは間違いありません。

そのなかで少しずつ注目を集めているのが、口腔ケアです。ところが柴田さんの言う通り、まだまだ認知度は低いのが現実。口と全身疾患の関わりについてさまざまな形で報道されるものの、自分ごととしてピンと来ている人は少ないのではないでしょうか。

現在柴田さんはパームリー協会の認定トレーナーになるべく、カリキュラムを受講しています。これまでの時間を看護の世界に費やしたぶん、次は予防のことを本格的に学ぶためだといいます。

口と命のつながりを専門的な視点から世の中へ広めていくことは、人々の健康を担う医療従事者が最初の一歩としてできること。看護師と歯科衛生士がタッグを組んで発信するというやり方は最も説得力があり、効率的な方法なのかもしれないですね。